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  • フェスに行かなくなっても音楽は楽しめる — 大人の音楽との付き合い方

    フェスに行かなくなっても音楽は楽しめる — 大人の音楽との付き合い方

    20代の頃は、夏になればフェスに行っていた。

    炎天下でビールを飲んで、知らないバンドのステージで踊って、夜は疲れ切って寝る。
    あれはあれで、最高に楽しかった。

    でも、いつの間にか行かなくなった。
    体力的にきつい。人混みが億劫。日程を合わせるのが面倒。チケットも高い。
    理由はいくつかあるが、要は「生活のフェーズが変わった」というだけだ。

    フェスに行かなくなったことで、音楽から離れてしまった人もいるかもしれない。
    でも、フェスは音楽の楽しみ方の一つに過ぎない。
    大人には大人の、音楽との付き合い方がある。

    この記事の要点

    • フェスに行かなくなることは、音楽の終わりではない
    • 自宅で聴く楽しみ方は、大人になってから深くなる
    • 小箱ライブは、フェスとは違う音楽体験ができる
    • レコードという選択肢も、今はハードルが低い

    フェスに行かなくなる理由は「音楽に飽きた」からではない

    フェスから離れた人に話を聞くと、「音楽が嫌いになったわけではない」と言う人がほとんどだ。

    体力の問題。スケジュールの問題。お金の使い方の優先順位が変わった問題。
    どれも音楽への興味とは関係がない。

    ただ、フェスが音楽体験の中心だった人は、フェスがなくなると音楽との接点そのものが減ってしまう。
    「聴く場」を失ったことで、結果的に音楽から遠ざかる——というパターンは多い。

    だから必要なのは、フェスに代わる「聴く場」を作ること。
    それは自宅でもいいし、小さなライブハウスでもいい。

    自宅で聴く — 大人になってから深くなる楽しみ方

    若い頃は、音楽は「外で聴くもの」だった。
    ライブ、フェス、カラオケ、ドライブ。音楽はいつも外出とセットだった。

    でも大人になると、「自宅で一人で聴く」ことの良さに気づく。

    好きな音量で。好きな姿勢で。誰にも気を使わずに。
    ヘッドフォンをつけて目を閉じて、アルバム1枚を通して聴く。
    この体験は、フェスとはまったく違う種類の豊かさがある。

    自宅で聴くなら、少しだけ環境を整えるといい。
    Bluetoothスピーカーを一つ買う。ヘッドフォンを少し良いものにする。
    それだけで、サブスクの音楽が「BGM」から「体験」に変わる。

    小箱ライブ — 知らないアーティストとの偶然の出会い

    フェスは何万人規模のイベントだが、ライブハウスの「小箱」は50〜200人程度。
    距離が近く、音が直接体に届く。演者の表情まで見える。

    小箱ライブの良さは、「知らないアーティスト」との偶然の出会いがあることだ。
    フェスでは大物アーティストを目当てに行くが、小箱では「たまたまやっていたライブ」に入ることもできる。

    チケット代も2,000〜4,000円程度と手頃。
    平日の夜に1〜2時間で完結するので、週末のスケジュールを潰す必要もない。

    まずは近所のライブハウスのスケジュールを見てみるだけでいい。
    気になる名前があれば、サブスクで予習してから行くとハードルが下がる。

    一人で行くのが不安なら、カウンター席があるライブバーから始めるのもいい。ドリンク1杯頼んで、たまたま流れている音楽を聴く。それだけでも十分な音楽体験だ。

    レコード — 「モノとして音楽を持つ」という贅沢

    サブスクで何でも聴ける時代に、あえてレコードを買う。
    合理的ではないが、だからこそ趣味として面白い。

    レコードの良さは「モノとして手元にある」ことだ。
    ジャケットのアートワーク、盤面の溝、針を落とす瞬間。
    デジタルでは得られない「物理的な体験」がある。

    「レコードなんて高いし場所を取るし」と思うかもしれない。
    でも実は、入門用のレコードプレーヤーは1万円台から手に入る。
    中古レコードなら数百円から探せる。レコードショップを巡る時間そのものが、音楽の楽しみ方になる。

    全部をレコードにする必要はない。
    本当に好きなアルバムだけをレコードで持つ——その「贅沢感」が、音楽との付き合い方を少し変えてくれる。

    まとめ — フェスの先に、音楽の楽しみ方がある

    フェスに行かなくなっても、音楽は楽しめる。
    むしろ、大人になってからの方が「自分なりの聴き方」ができる。

    自宅で一人で、アルバムを通して聴く。
    小箱ライブで、知らないアーティストと出会う。
    レコードで、好きなアルバムをモノとして持つ。

    どれか一つでいい。
    音楽との接点を、フェス以外の場所に作るだけで、また音楽のある生活が始まる。

    フェスに行っていた頃の自分が楽しかったように、今の自分にも合った楽しみ方がある。それを見つけるのは、難しいことではない。まずは今夜、イヤホンでアルバムを1枚、通して聴いてみてほしい。

  • 大人が今から聴き始めるならこのジャンル — 入口になるアーティストと一緒に

    大人が今から聴き始めるならこのジャンル — 入口になるアーティストと一緒に

    音楽を聴きたい気持ちはあるのに、何を聴けばいいかわからない。

    サブスクを開くと、ジャンルが山ほどある。ジャズ、R&B、エレクトロニカ、アンビエント……名前は聞いたことがあるけど、違いがよくわからない。

    結局、昔聴いていた曲をリピートして終わる。
    それも悪くないが、「新しい音楽に出会いたい」と思ったとき、入口がないと動けない。

    この記事では、大人が「今から聴き始める」のに向いている5つのジャンルを、入口になるアーティストと一緒に紹介する。

    この記事の要点

    • おすすめジャンルは5つ:ジャズ / R&B / シティポップ / ローファイ / エレクトロニカ
    • 各ジャンルに「ここから聴けばいい」というアーティストを紹介
    • 全部サブスクで聴ける前提
    • ジャンルに詳しくなる必要はない。「なんとなく好き」で十分
    • フェスに行かなくなっても音楽は楽しめる

    ジャズ — 「BGMとして最強」のジャンル

    ジャズと聞くと敷居が高く感じるかもしれない。
    でも、BGMとして流す分には、ジャズほど万能なジャンルはない。

    朝のコーヒータイムに。夜のリラックスタイムに。作業中に。
    どの場面でも邪魔にならず、空間を少し上質にしてくれる。

    入口:Bill Evans — ジャズピアノの巨匠。「Waltz for Debby」は、カフェでかかっていても違和感がない穏やかさがある。まずはこのアルバムを1枚通して聴いてみてほしい。

    発見枠:Robert Glasper — ジャズにヒップホップやR&Bを混ぜた現代的なサウンド。「古いジャンル」のイメージを覆してくれる。「Black Radio」シリーズはジャズ初心者にも聴きやすい。

    R&B — 夜に合う、ちょうどいい温度感

    R&Bは、ポップスとソウルミュージックの中間にあるジャンル。
    メロディアスで聴きやすく、テンポもゆったりしたものが多い。夜の一人時間に最も合うジャンルの一つだ。

    入口:Daniel Caesar — カナダ出身のシンガー。柔らかい歌声と落ち着いたトラックで、「聴いていて心地いい」の代表格。「Best Part」はどこかで耳にしたことがあるかもしれない。

    発見枠:SZA — アメリカのR&Bシンガー。グラミー賞を受賞し、世界的に評価が高い。日本ではまだ知名度が高くないが、「SOS」というアルバムは聴きごたえがある。

    邦楽なら藤井 風がこのジャンルに近い。R&Bとソウルをベースにした楽曲で、日本語の歌詞がすっと入ってくる。「何なんw」「まつり」あたりから聴いてみるといい。

    シティポップ — 日本の音楽が、実は世界で再評価されている

    1970〜80年代の日本のポップスが、海外で「シティポップ」として再発見されている。
    都会的で洗練されたサウンドは、今聴いても古さを感じない。

    日本人なら歌詞もわかるし、どこか懐かしい。
    「日本の音楽を聴き直す」入口として最適だ。

    入口:竹内まりや — 「Plastic Love」がYouTubeで数千万再生を記録し、世界的にバズった。シティポップブームの象徴的な存在。

    発見枠:角松敏生 — ファンキーでグルーヴィなサウンドが特徴。竹内まりやよりもう少しディスコ寄りで、夜のドライブに合う。知る人ぞ知る存在だが、海外のDJにはファンが多い。

    ローファイヒップホップ — 作業BGMの定番

    YouTubeの「lofi hip hop radio – beats to relax/study to」を見たことがある人は多いだろう。
    あの音楽がローファイヒップホップだ。

    歌詞がなく、テンポが一定で、集中を妨げない。
    作業中のBGMとしては最適解の一つ。

    入口:Nujabes — 日本人プロデューサーで、ローファイヒップホップの源流と言われる。2010年に亡くなったが、作品は今も色褪せない。「Metaphorical Music」は必聴。

    発見枠:Idealism — ドイツのビートメイカー。Nujabesの影響を受けた穏やかなトラックが多い。Spotifyで気軽に聴ける。

    エレクトロニカ — 「音の風景」を楽しむ

    エレクトロニカは、電子音を使った音楽の総称。
    ダンスミュージックとは違い、聴くための電子音楽——「音の風景」を楽しむジャンルだ。

    歌がないものも多く、何も考えたくない夜や、集中したいときに合う。

    入口:Tycho — エレクトロニカとアンビエントの中間。適度にリズムがあり、聴いていて心地いい。「Dive」というアルバムが入口として最適。

    発見枠:Boards of Canada — スコットランドのデュオ。ノスタルジックで少し不思議な音世界。好き嫌いは分かれるが、ハマると抜け出せない。「Music Has the Right to Children」が代表作。

    日本のエレクトロニカならCornelius。小山田圭吾のソロプロジェクトで、音の実験と聴きやすさを両立している。「Point」というアルバムは海外でも高い評価を受けている。

    まとめ — ジャンルは「入口」であって「ゴール」ではない

    5つのジャンルを紹介したが、全部を聴く必要はない。
    説明を読んで「ちょっと気になる」と思ったジャンルが一つあれば、そこから始めればいい。

    ジャンルに詳しくなる必要もない。
    大事なのは「自分が聴いていて心地いい音楽」を見つけること。ジャンル名はただのラベルだ。

    まずは紹介したアーティストの中から1人選んで、アルバムを1枚聴いてみてほしい。
    「なんとなく好き」——その感覚が、新しい音楽への入口になる。

  • サブスク時代の音楽との付き合い方 — 聴き放題なのに何も聴いていない問題

    サブスク時代の音楽との付き合い方 — 聴き放題なのに何も聴いていない問題

    サブスクに入っているのに、最近ほとんど音楽を聴いていない。

    月額を払って、アプリは入っていて、1億曲以上が聴ける状態にある。
    なのに、開くのはたまに。開いても何を聴くか決まらず、結局閉じる。

    聴き放題なのに、何も聴いていない。
    これは意外と多くの人が抱えている、サブスク時代の静かな問題だ。

    原因は「音楽への興味がなくなったから」ではない。
    選択肢が多すぎて、選ぶこと自体がストレスになっているからだ。

    音楽好きに戻る必要はない。
    ただ、自分なりの「聴き方のパターン」を一つ持っておくだけで、サブスクとの距離感は変わる。

    この記事の要点

    • サブスクで音楽を聴かなくなるのは、選択肢が多すぎるのが原因
    • 好きなジャンルを決める必要はない。「聴き方のパターン」を持てばいい
    • 朝の1曲、夜のアルバム、作業中のプレイリスト——生活の中に入口を作る
    • サブスクの使い方を整えるだけで、音楽はもう一度身近になる

    なぜ「聴き放題」なのに聴かなくなるのか

    CDを買っていた頃の方が、音楽を聴いていた気がする。
    そう感じる人は少なくない。

    理由はシンプルで、CDは「選んだものを繰り返し聴く」構造だった。
    お金を出して買ったから、元を取るように聴く。アルバム1枚を何周もする。
    選択肢が少ないからこそ、深く聴いた。

    サブスクは真逆だ。
    全部聴ける。いつでも聴ける。だから、逆に「今これを聴く理由」がない。
    おすすめが次々に出てくる。でも、どれも「なんとなく」で、特に刺さらない。

    これは決断疲れと同じ構造だ。
    選択肢が多すぎると、人は選ぶこと自体を避けるようになる。
    結果、アプリを開かなくなる。月額だけ払い続ける。

    音楽が嫌いになったわけではない。
    聴き方がわからなくなっただけだ。

    サブスクとの付き合い方 — 3つのパターン

    音楽好きに戻る必要はない。ジャンルに詳しくなる必要もない。
    ただ、「自分はこういうときに音楽を聴く」というパターンを一つ持っておくと、サブスクが急に使えるものになる。

    パターン1: 生活の場面に紐づける

    「朝起きたらこれ」「夜はこれ」「作業中はこれ」。
    場面に1つずつ音楽を紐づけるだけで、聴く理由が生まれる。

    たとえば、朝のコーヒーを入れるときにジャズをかける。
    仕事中はローファイヒップホップを流す。
    夜、部屋でくつろぐときはアコースティック系をかける。

    何を聴くか毎回考えなくていい。場面に紐づいていれば、アプリを開いてすぐ再生できる。
    「聴く」のではなく「流す」感覚で十分だ。

    パターン2: 週に1枚、アルバムを通して聴く

    サブスクのおすすめは基本的に「曲」単位だ。
    1曲聴いて、次の曲が始まって、気づいたら知らないアーティストの知らない曲が流れている。

    そこで、あえて「アルバム1枚を通して聴く」を試してみる。
    週に1枚でいい。全部を好きになる必要もない。

    アルバムには流れがある。1曲目から最後まで通して聴くと、曲単位では気づかなかった良さが見えてくることがある。
    CDを買っていた頃の聴き方に近い。

    選び方がわからなければ、各サブスクの「名盤」「ベストアルバム」系のプレイリストから選べばいい。
    知っている名前のアーティストのアルバムを1枚選んで、通勤中や家事中に流す。それだけで十分だ。

    パターン3: 自分のプレイリストを1つだけ作る

    おすすめプレイリストは便利だが、「自分の好みに100%合う」わけではない。
    30曲中25曲が微妙で、5曲だけ良い——ということはよくある。

    その「5曲」を、自分のプレイリストに入れていく。
    名前は何でもいい。「夜」「作業」「なんとなく好き」——適当で構わない。

    これを続けると、数ヶ月で「自分だけのプレイリスト」ができあがる。
    誰に見せるものでもない。ただ、「これをかけておけば間違いない」という安心感のあるリストがあるだけで、サブスクの使い勝手は格段に上がる。

    サブスクの「おすすめ」を上手く使うコツ

    サブスクのアルゴリズムは、使えば使うほど精度が上がる。
    ただし、最初の段階では的外れなおすすめが多い。ここで「自分には合わない」と判断してしまう人が多い。

    コツは3つある。

    • 好きな曲に「いいね」をつける — アルゴリズムが学習する最大の手がかりは「いいね」だ。聴いて良かった曲にはとにかくハートを押しておく
    • 合わない曲はスキップする — スキップもアルゴリズムへのフィードバックになる。合わないものは遠慮なく飛ばしていい
    • 「Discover Weekly」「New Music Mix」を定期的にチェックする — Spotifyの場合、毎週月曜に更新される自分専用のプレイリストがある。Apple Musicにも似た機能がある。最初は精度が低くても、使い続けると驚くほど好みに合ってくる

    要するに、アルゴリズムに「自分の好み」を教えてあげる作業を、最初だけやっておくと、その後がずっと楽になる。

    どのサブスクを使うかは、正直どれでもいい

    Spotify、Apple Music、Amazon Music、YouTube Music——主要なサービスはいくつかある。
    「どれがいいか」と聞かれることが多いが、正直なところ、楽曲のラインナップに大きな差はない。

    違いがあるとすれば、以下のような点だ。

    • Spotify — プレイリストの充実度とアルゴリズムの精度が高い。音楽の「発見」がしやすい
    • Apple Music — iPhoneとの連携がスムーズ。Apple製品を使っている人は自然に使える
    • Amazon Music — Prime会員なら追加料金なしで一部楽曲が聴ける。普段Amazonを使う人にはハードルが低い
    • YouTube Music — ミュージックビデオも含めて聴ける。YouTubeをよく見る人には馴染みやすい

    大事なのは「どのサービスを使うか」ではなく、「使い方のパターンを持っているか」だ。
    どれを選んでも、開かなければ同じだし、パターンがあれば、どれでも使える。

    すでに何かに入っているなら、まずはそれで試してみればいい。
    乗り換えを考えるのは、物足りなくなってからで十分だ。

    まとめ — サブスクは「使い方」で変わる

    聴き放題なのに聴かない。
    それは音楽への興味がなくなったのではなく、選び方がわからなくなっただけだ。

    場面に紐づける。週1枚アルバムを聴く。自分のプレイリストを作る。
    どれか一つでいい。聴き方のパターンを持つだけで、サブスクは「月額だけ払っているもの」から「毎日の生活にある音楽」に変わる。

    まずは今夜、アプリを開いて何か一つ再生してみてほしい。
    それが、サブスクとの付き合い直しの最初の一歩だ。